産業廃棄物収集運搬業の許可申請には「財政能力に関する書類」が必要となる
産業廃棄物収集運搬業の許可申請には、様々な書類が必要となります。
その中には、「財政能力に関する書類」というカテゴリーで、以下の財務関係書類が必要となります。(都道府県ごとに違いあり)
- 直近3年分の貸借対照表
- 直近3年分の損益計算書
- 直近3年分の株主資本等変動計算書
- 直近3年分の個別注記表
- 法人税の納税額証明書
- 所得税の納税証明書
- 経理的基礎を有することの説明書・記載者の資格証明書、又は返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類
これらの財務書類については、都道府県により、また法人の財務状況により必要である場合と必要でない場合がありますが、まずは法人の産業廃棄物収集運搬業の許可申請に必要となる基本的な財務書類について説明します。
法人の産業廃棄物収集運搬業許可申請に必要な基本的財務書類
直近3年分の貸借対照表(BS バランスシート)
まずは直近3年分の貸借対照表です。貸借対照表とは、企業等のある時点における資産、負債、純資産の状態を表す財務書類です。
「資産の部」と「負債の部と純資産の部の合計」が等しくなることから、バランスシートとも呼ばれます。
【貸借対照表の例】

直近3年分の損益計算書
損益計算書は、ある一定期間の収益と費用を表す財務書類です。利益と費用を表す(Profit and Loss Statement)ということから「P/L」と呼ばれることもあります。
貸借対照表が「点」を表すことと違い、損益計算書は「期間(線)」の財務状況を表すものです。
【損益計算書の例】

直近3年分の株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の「純資産」の変動状況を表す財務諸表です。期中の純資産の変動を適切に把握する必要性から当該財務諸表が作られるようになりました。
【株主資本等変動計算書の例】

直近3年分の個別注記表
個別注記表とは、貸借対照表、損益計算書と株主資本等変動計算書の補足する書類であり、企業に作成義務のある財務諸表に注記を加えるためのものです。
【個別注記表の例】

直近3年分の法人税の納税証明書(その1納税額等証明書用)
法人税の納税証明書は、管轄の税務署で入手することができます。住民税等の納税証明書とは違い、市町村役場では入手できませんので注意しましょう。
【法人税の納税証明書(その1 納税額等証明書用)の例】

納税証明書のポイント(東京都の場合)
東京都では、納税証明書に記載されている内容を基に、追加書類の要否が決まります。
見るべきポイントは「直前期の申告額及び納付済額、未納税額」の欄です。ここが「直近の納税額が1円以上、かつ3年間に未納税額がないこと」の条件をクリアしていれば、その時点で追加書類は必要ありません。その前の年やさらに前の年が条件をクリアしていなくても構いません。
東京都以外の審査についても「直近」についての財務状況をチェックされますので、多くの場合、2年前、3年前の財務状況が悪くても申請することが可能です。
納税証明書取得の際の注意点
産業廃棄物収集運搬業許可申請に必要な納税証明書は、「その1 納税額等証明書用」となります。納税証明書の表題部に下記の表記がされているものです。

税務署で取得できる納税証明書は数種類ありますが、その他の納税証明書を取得しないよう注意しましょう。
下記の図は納税証明書を請求する際に提出する交付申請書ですが、「証明書の種類欄」を「その1」とし、「法人税」にチェックをします。

必要な期間は「直近3年分」ですので、「証明を受けようとする国税の年度」欄3つに一年度ずつ期間を記載しましょう。産業廃棄物収集運搬業許可申請においては「証明を受けようとする事項」には特に記載しなくてかまいません。

直近の事業年度において債務超過(純資産がマイナス)の状態にある場合などに必要となる財務書類
法人の経営状況によって追加書類が必要となる場合がありますが、これらにの書類については、都道府県ごとに取扱いの違いが見られます。
例えば埼玉県の産業廃棄物収集運搬業許可申請においては、「直近の事業年度において、債務超過(純資産がマイナス)の状態にある場合」には、状況に応じて下記の図のような取扱いとなります。

「財務実績・計画書」とは、直前3年の財務状況及び、無効5年分の財務計画(見込み)を記載するものです。
【財務実績・計画書の例(埼玉県HPより)】

さらに「財務診断書」が必要となりますが、これも都道府県によって取扱いが違います。

東京都では、埼玉県の財務診断書に類似する追加提出書類として「経理的基礎を有することの説明書」というものがありますが、こちらは「中小企業診断士、公認会計士又は税理士」作成のもので構いませんが、埼玉県の財務診断書は「中小企業診断士又は公認会計士が作成した財務診断書」とされており、税理士が作成することはできません。
産業廃棄物収集運搬業許可申請の特徴として、「都道府県ごとに取扱いが異なる」という部分が非常に多いため、それぞれの申請要件等を確認する必要があります。
会社を作ったばかりであるため財務諸表が用意できない場合
会社を立ち上げたばかりでまだ財務諸表が作成できない場合も当然あります。会社設立から一年でも経っている場合はその年度分の財務諸表で構いませんが、一年も経過しておらず財務諸表自体が存在しない場合は、別個の提出書類が設けられている場合があります。
【埼玉県の例】
- 金融機関の残高証明書
- 融資証明書(融資を受けている場合)
- 財務実績・計画書
なお、新規設立法人の場合の財務実績・計画書については、「イ」の欄は記載不要となります。

【東京都の場合】
- 開始貸借対照表
産業廃棄物収集運搬業許可申請に必要な財務書類は都道府県ごとに違う
以上、法人の産業廃棄物収集運搬業の許可申請に必要な財務書類について説明させていただきましたが、必要な財務書類や要件については都道府県ごとに違いが見られます。
ご自身で申請都道府県についての必要書類、要件等について調べたり、問い合わせを行うとなるとかなり大変な作業となりますので、行政書士の代理申請などを活用し、安心して業務に打ち込んでいただければと思います。